ケース①
「モテたいから、東大に入った」
同期きっての秀才に東大を目指した経緯を聞くと意外な言葉が返ってきました。彼は勉強が好きで出来すぎたから東大に入ったのだと思い込んでいました。
「うちの親は年取ってからのお見合い結婚だし、東大にでも入らないと自分は結婚できないと思った」
結局、彼は東大進学後も彼女はできず、社会人になりました。
最近は仕事の繁忙で彼女探しどころではなくなり、結婚相談所への入会を検討しています。
ケース②
「先輩、ようやく彼女(彼氏)ができました」
かつての同僚たちは、30歳が近づくと慌ててマッチングアプリをインストールし、4-5人と会って恋人を作り、1年以内に結婚していきました。
恋人を紹介してもらうことも多かったのですが、妙に納得感のある、優しそうで真面目そうな相手がいつも現れました。
それはまるで、アマゾンマーケットプレイスで選んで買った商品のように、良いもの(人)ですが、驚きはないのです。
現在のマッチングアプリは、かつて出会い系サイトと呼ばれていたアングラな世界とは違い、ごく普通の人が利用するようになりました。自分の趣味や好み(学歴や年収含む)を入力すると、それに合う相手がレコメンドされ、ベッドでゴロゴロしながら恋人探しができるようになりました。傍からみて納得感のある相手が見つかっているということは、効率的な恋愛市場が形成されているのかもしれません。
ケース③
多様性の時代と言いながら、国や自治体、メディアではあの手この手で子どもをいかに増やすかが議論されています。少子化は共同体存続の危機です。
ケース①-③を通じて、ずっと違和感がありました。
こんな恋愛って楽しいのでしょうか。
国や企業が作った疑似恋愛市場に自分という商品を陳列し、参加者に選んでもらう。大量消費社会に向けて生産される、養豚場の豚や生け簀の中のブリのように、売り時が来たら私たちも”出荷”されていくのです。
私は学生時代から自分が可愛いと思った相手と付き合いたかった。それだけでした。それ以外のことは付き合って確かめていけばいいと思っていました。ようやく見つかった理想の彼女にフラれ、もうこれ以上の相手とは付き合えないと、カラオケボックスで一人涙した夜もあります。
私は、こんなつまらない日本の恋愛市場を変えたいと思い、当時の自分のようにもがき苦しんでいる”同士”がいることを信じ、「大学生ナンパ物語」を書き始めました。
ナンパという言葉の響きは強いので、毛嫌いされる方もいらっしゃるかもしれません。でも私たちは何事もなく生まれてきたような顔で生活していても、男女の関係から始まったのです。
これを読んでいてもたってもいられなくなり、外の世界に飛び出し、たくさん笑い、たくさん傷ついてほしいと思います。
そんなきっかけになれば、幸いです。
ろん